IPO

株式公開時にシ団を組成する理由

 

IPOを目指す会社の経営者であれば、たま~に耳にする言葉に「シ団」があると思います。シ団とは何か、シ団の組成は必須なのか、メリットはあるのかなどを本記事で解説いたします。

 

シ団とは何か?

シ団とは師団ではありません。

シンジケート団の略称で、引受シ団とか引受シンジケート団とか呼ばれたりもします。

IPO時におけるシ団とは有価証券の募集・売出しの際に販売力を強めることにより売れ残りリスクを分散させることを目的として組成される引受団の事を言います。

 

 

シ団の組成か必須か?

シ団の組成は必須ではありません。

上記の通り、シ団の目的は有価証券の販売力を強化して売れ残りリスクを分散することに有りますが、近年の大手や準大手の証券会社では余程の規模のファイナンスでない限り、基本的には単独で捌けるだけの販売力を有しているため、事実上リスク分散をあまり意味をなさない状態となっております。

実際に2018年1月から9月の新規公開企業の主幹事証券会社のシェアは平均で87%ほどあり、主幹事を務める証券会社によってはシェアをどれだけ多く取るかが担当者の評価に直結するところもあるようです。

 

 

シ団を組成する理由は?

では、シ団を組成しないIPOがどの程度あるかというとほとんどありません。2018年の1月から9月までのIPOを見ると、シ団を組成していない会社は1社もありませんでした。

ではなぜシ団を組成するのか。私見としては以下の2点があると考えられます。
 

1.主幹事証券に緊張感を与える!?

主幹事証券は、顧客のステージごとに次のような役割を持っています。

①上場前

  • 資本政策のアドバイス
  • 社内管理体制の指導
  • 申請書類作成の指導
  • 証券取引所との折衝

②上場時

  • 募集及び売出しによる株式の引受、公開価格の決定、取引所等の上場審査への対応

③上場後

  • 資金調達に関する指導、株価についての助言等

このように、主幹事証券との付き合いは上場までに限らず、上場後も長い付き合いになって行きます。そのため、主幹事証券がサービスレベルを落とすことなく緊張感を持った関係性を構築するために、大手証券を1社~2社ほどシ団に入れることが一般的になっていると考えられます。

 

2.株価を安定させる!?

シ団にどのような種類の証券会社を入れるかによって、株価にどのような傾向が生じるかについて、国内外で様々な研究が行われております。

その中でも、最近の傾向を分析した論文では以下の結論に帰結しております。

  1. シ団にネット証券を入れた方が公募価格に対して初値は高くなるが、1年後株価が下がる傾向にある(ネット証券がシ団にいない企業群の方が公募価格に対する1年後の株価が高い傾向にある)。
  2. シ団に大手証券を入れても入れなくても公募価格に対する初値の水準にあまり影響を及ぼさないが、大手証券会社が多いほど1年後の株価の水準は高くなる傾向にある。

上記の研究結果を踏まえれば、上場時の株価対策としてはネット証券をシ団に入れるべきであり、その後の株価対策としては大手証券を入れるべきであると考えらます。

 

2018年1月から9月のシ団の構成社数は平均で7社ほどとなっており、主幹事を大手が務めるケースにおいても平幹事の筆頭に大手証券を持ってくる傾向が多く、そのほとんどにネット証券がはいっております。

 

 

シ団はだれがえらぶ??

シ団を組成するのにどうすればよいか、証券会社に電話を掛けるのか、などと思うかもしれません。

しかし、このようなアクションは基本的には不要となります(依頼したい特定の証券会社があれば別ですが)。特に積極的に動かなくても上場時期が近付くにつれて貴社のCFOのもとに様々な証券会社がアプローチをしてきます。

貴社では、いろんなアピールをしてくる証券会社の話を聞いてみて、どのようなメリットを享受したいかを考えながら選べばいいのです!

 

 

The following two tabs change content below.
黒木信吾
IPO支援や決算支援、非営利法人関係や財務DDなどの幅広い業務領域で展開する一方で、企業の役員や内部監査等、企業内部からの支援を展開しております。