前回の記事は監査等委員会設置会社についてのプロローグ程度の内容でしたが、当記事では、もう少し掘り下げた話をしていきたいと思います。
なぜ新しい機関として作る必要があったのか?
ズバリ、日本のガバナンス(経営を監視する仕組み)の健全性を海外の投資家にアピールするためです。
従来、日本の上場会社は監査役会設置会社という会社の形を選択していることがほとんどでしたが、この監査役会設置会社という機関は海外には存在しないため、外国人投資家には理解されにくいという問題を抱えていました(昔は監査役の英語表記がKANSAYAKUだったみたいです(笑)。ちなみに現在はAudit & Supervisory Board Memberというカッコいい名前になっています)。さらに、日本では定期的に大規模な会計不祥事が起きており(カネボウ、オリンパス等)、ガバナンスが効いていないのではないか、透明性を高めてほしいという要請も強くなってきました。そこで、外国人投資家にも理解してもらえるようなガバナンス体制を構築すべく、海外でスタンダードな機関設計である指名委員会等設置会社の要素を取り入れた監査等委員会設置会社という新しい会社の形を作ったのです。
なぜ、指名委員会等設置会社にしないのか?
海外投資家に向けてガバナンスの健全性をアピールしたいのであれば、海外におけるスタンダードな機関設計としての指名委員会等設置会社(※1)への移行を促せばよいのではないでしょうか。日本取締役協会の調べによると2018年3月時点で指名委員会等設置会社を選択している会社は71社であり、上場会社全体の約2%しか選択していないことになります。これはもはや制度としての存在意義すら疑うレベルです。
なぜ、日本では指名委員会等設置会社は普及していないのでしょうか。これは指名委員会等設置会社の制度設計が日本の企業文化になじまない事が原因だと考えられています。具体的には、他の機関と比較して社外取締役を多く要するため人材の確保が困難、経営者の報酬内容を報酬委員会という社外取締役が過半数を占める会議体で決定されてしまうため納得感がない等、山のように問題点が指摘されています。
(※1)指名委員会等設置会社(旧委員会設置会社)は日本でも選択可能で、2003年にすでに制度導入されています。
まとめ
日本企業におけるガバナンスの健全性を海外投資家にアピールしたいが、海外におけるスタンダードな機関としての指名委員会等設置会社は日本の企業文化になじまないため、監査役会設置会社という従来から親しまれた機関との折衷案として監査等委員会設置会社を新しい制度として導入した。
次回はなぜ海外投資家をそこまで意識するようになったのかを記事にしていきます。
松浪静
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