Ⅰの部をチラ見しながら、予測や私見を織り交ぜつつ㈱エヌリンクスのIPOを分析してみました。(著者は目論見書等は見ないで記載している点にご留意ください)
㈱エヌリンクスの概要
㈱エヌリンクスは第8期目での上場となります。業績をみる限り計画通りの上場タイミングだったと思われます。
豊島区に本社を構えて500名超の労働集約型ビジネスとくると、コールセンターのイメージを持つのは筆者の偏見でしょうか。エヌリンクスと言う社名とメディア事業を全面に出してPERの最大化を目指すなら(目指したかは分かりませんが)、本店所在地は豊島区を避けた方が良かった気もしますね。
㈱エヌリンクスの実際のメイン事業はNHKの放送受信料の契約・収納代行業務のようです。
㈱エヌリンクスの上場の概要は以下の通りです。
会社名 | ㈱エヌリンクス | 市場 | JQスタンダード |
上場承認日 | 2018/3/23 | 上場日 | 2018/4/27 |
本店 | 東京都豊島区 | 代表 | 栗林憲介 |
従業員数 | 539人 | 平均年齢 | 28歳 |
発行済株式(株) | 2,000,000 | 株主名簿管理人 | 三井住友信託 |
主幹事証券 | SBI証券 | 監査法人 | トーマツ |
㈱エヌリンクスの発行条件
仮条件(上限値) | 1,810 | 公募・売出価格 | – |
売出株数(株) | 108,000 | 公募株数(株) | 300,000 |
売出総額(千円)※ | – | 公募総額(千円)※ | – |
時価総額(千円)※ | – |
※公募・売出価格に値があれば、その値を使っており、無ければ仮条件の上限値を使って算定している。
株主 | 株式数(株) | 持分比率 |
栗林憲介 | 700,000 | 33.26% |
栗林圭介 | 520,000 | 24.71% |
KKインベストメント | 400,000 | 19.01% |
ケイアンドケイ | 200,000 | 9.50% |
花井大地 | 69,240 | 3.29% |
㈱エヌリンクスは最高の「ウェブ×リアル」カンパニーを創造するというビジョンを掲げており、営業代行及びメディア事業等を運営しています。
NHKの放送受信料もメディアとリアルという意味ではビジョンの範疇でしょうか?
平成22年にNHKからの契約・収納代行業の受託会社としてスタートして、平成24年に「塾・予備校ナビ」をリリース、平成26年に「イエプラ」をリリース、同年家探し店舗「家AGENT」を開設、平成27年に「アルテマ」をリリースとの事です。同社のビジョンからすると、「イエプラ」と「家AGENT」当たりがやりたかったことのように思います。
株主の上位2名はご兄弟ですね。また、その下の3位4位は名前からすると資産管理会社でしょうから、ご兄弟で86%超を保有していることになり、500名規模の会社として資本政策はとてもうまく行ったように思います。
㈱エヌリンクスの業績概要
単位:千円 | 3期 | 4期 | 5期 | 6期 | 7期 |
売上高 | 616,222 | 910,473 | 1,450,537 | 2,252,817 | 3,054,498 |
経常利益 | 60,572 | 96,520 | 12,421 | 50,195 | 202,856 |
当期純利益 | 39,912 | 66,381 | 9,216 | 66,891 | 136,930 |
業績のトップラインは順調に伸びてますね。同社セグメントは主に①営業代行事業、②メディア事業、③その他の3つとなっています。
Ⅰの部によると第7期のセグメント別の業績は下記の通りになってます。
①営業代行事業
売上2,643百万円
セグメント利益300百万円
②メディア事業
売上239百万円
セグメント損失44百万円
③その他
売上13百万円
セグメント利益0百万円
これらを見ると、基本的にはNHKの受託業務の会社ですね。
受託業務で得た収益を本当にやりたい「ウェブ×リアル」の事業に投下してして、ブレイクスルーを目指しているところといった感じでしょうか。
気になる直近四半期(第3四半期)のセグメント別の業績は下記の通りになってます。
①営業代行事業
売上2,264百万円
セグメント利益216百万円
②メディア事業
売上524百万円
セグメント利益31百万円
③その他
売上11百万円
セグメント利益0百万円
メディア事業がささやかながら益転してますね。イエプラ及び家AGENTとアルテマが双方伸びているようです。広告費がおそらく半分くらいになった一方で、人員を多く投下した結果、まだ売上の伸びがコストで吸収されてますね。
営業代行事業について大きな伸びは業種的に難しいことを考えると、やはりメディア事業がブレイクする事を期待したいですね。
㈱エヌリンクスの事業分析
㈱エヌリンクスは新規上場会社概要によると『営業代行事業(NHKの契約・収納代行業務)、メディア事業(チャットによる不動産仲介、ゲーム攻略サイトの運営)』を行う[サービス業]に分類される事業を行っています。Ⅰの部【事業の内容】によるとNHKからの契約・収納代行業務を主とする営業代行事業とチャットシステムを利用したお部屋探されサイト「イエプラ」の運営及びゲーム攻略サイトである「アルテマ」の運営を主としたメディア事業から構成されています。
[強み]
インターネットやメディア領域に専門性を持ち、BtoC領域での対面営業スキルを持つことから、環境変化の著しい昨今のインターネットメディア業界において、ウェブにリアルの関係性を掛け合わせることで、独自性を強め、他企業との差別化を図っているとのことです。
[業界]
①営業代行事業
売上総額の80%をNHKの1社で稼いでおり、経営的にはとても不安定と言えますね。当然事業等のリスクにも記載されており、複数の受託業者の存在、自動更新となっていないリスク、放送法の改正リスクを抱えるなど、様々なリスクを抱えているのが現在の状況のようです。
②メディア事業
メディア事業では、近年話題の不動産テックの領域やゲームの領域など、巨大市場の中の割とニッチな部分での参入となっております。
これらの領域において市場が拡大した場合には、当然専業者が参入することが予想されるため、リアルの部分でどう持って行くかが今後の成長のカギになりそうですね。
まとめ
㈱エヌリンクスはNHKの契約・収納代行(営業代行事業)で生計を立てている会社となりますが、1社への売上依存度80%であること・複数の受託業者の存在・自動更新となっていないリスク・放送法の改正リスクなど、当該営業代行事業のみではリスクが高いことからメディア事業に資金投下してブレイクスルーを目指している会社となります。
メディア事業に関しては、不動産やゲームといった巨大市場の中で、チャットによる不動産仲介やゲーム攻略サイトなど、まだ成長していない分野への進出となっております。まだ未成長の分野ではあるものの、これらの分野の成長が始まった場合には専業会社との競争にさらされる可能性が高い点が心配ですね。
今後の展開としては、メディア事業をブレイクさせることは言うまでもなく、同社のビジョンである「ウェブ×リアル」にしたがって、メディア事業から他社には模倣が難しいリアルへのつながりを如何に作っていけるかが今後の成長のカギになりそうです。
㈱エヌリンクスのHPへ行く

黒木信吾

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