システム導入する目的
スタートアップから事業拡大に完全コミットしていた経営者にとって、IPOを目指す際に最初にぶつかる問題は会計及び内部統制だと思います。
なぜなら、上場会社においては、事業を安全確実に遂行して適時のその実態を会計数値に落とし込み決算状況を公表することが義務付けられているためです。
しかし、事業拡大の過程で場渡り的に導入したシステムやエクセルベースでの管理のままで、上場企業として耐えうる内部統制の構築及び決算体制の構築をしようとした場合、膨大な作業量となり今後の成長を阻害する要因と成り得ます。
その一方、業務フローに合わせた適切な形でのシステム導入を行うと、上場を目指す過程で積みあがっていく内部統制作業や決算作業を効率的に行うことが出来るようになり、むしろ今後の成長を支援してくれる財産となるのです。
迂闊なシステム導入の落とし穴
「システム導入」と言うと『システムを検討する」人が多いと思いますが、これは大きな間違えです。
企業にとって最も大事なことは、事業活動が効率的かつ効果的に運営できる体制を構築することになります。そのため、本来的には「システム導入」を行う際にはシステムを検討するのではなく、じっくりと時間をかけて業務を検討することから始める必要があるのです。
しかし、 業務フローの検討に時間をかけずにシステムの検討を行い始めると本来システムが業務を支援するべきところにもかかわらず、業務をシステムに合わせ始めることによって、従来よりも不効率になり成長を阻害しかねない状況が生み出されるのです。
システム導入の手順
システム導入の検討に当たっては以下の事項を漏れなく検討することが不可欠です。
2.一連の業務フロー(事業の川上から川下までの業務)の概要
3.各担当者レベルでの業務内容の詳細
4.実施されている内部統制の内容
5.エクセルや手作業で行っている作業の詳細
6.今後の事業や業務の変化見込み
7.その他
上記のように内部統制の詳細を把握することによって、システムありきの検討ではなく、事業ありきのシステム検討が出来るようになります。
●一連の業務フローの中でシステム化すべき部分としない部分の検討
●パッケージをそのまま用いるか、パッケージをカスタマイズするか、フルオーダーメイドするかを検討
●複数のシステムとなる場合には連携させるか否かを検討
●導入に当たり初期費用及び月額費用の予算を検討
●業者若しくはソフトウェアの選定
●データをどの程度移行するか
●導入までの時期はどこに設定するか
●その他
上記は、順番に検討するものではなく相互に複合的に関連するため、プロジェクトマネージャーが最適な方法をアレンジする必要があります。
システム導入を失敗しないために
システム導入は、導入範囲にもよりますが、相当程度のコストが掛かる一方で、失敗するリスクが少なくありません。
また、上述の通り個別にシステムを検討すればいいわけでは無く、業務フローに最適なシステムを相互に複合的に関連する条件の中で選び出さなければなりません。
さらには、導入に当たりベンダーとのコミュニケーションロスがその成否を分けることも少なくありません。
そのため、システム導入に当たっては、 「業務内容の詳細を把握することができる専門的な能力を有するプロジェクトマネージャーやサポートチームと協力して導入すること」が失敗しないための大切なこと になりますのでご留意ください。
蝦名大輔
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